インシデント報告書とは
インシデント報告書は、業務中に発生した事故・障害・トラブルなどの出来事を記録し、関係者に報告するための書類です。IT分野ではシステム障害、医療分野では医療事故、製造業では品質事故など、幅広い業種で使用されます。
インシデントの正確な記録は、原因究明と再発防止策の策定に不可欠です。また、組織としてのリスク管理や、監査・コンプライアンス対応の証跡としても重要な役割を果たします。
感情的にならず、事実を客観的に記録することが、良いインシデント報告書の基本です。
こんな時に使います
システム障害・サービス停止
サーバーダウン、ネットワーク障害、アプリケーションエラーなど、ITシステムに問題が発生した際に使用します。影響範囲と復旧までの経緯を記録します。
情報セキュリティ事故
不正アクセス、情報漏洩、マルウェア感染、USBメモリの紛失など、情報セキュリティに関わるインシデントを報告します。
品質事故・不良品の発生
製品の不良、出荷ミス、検査漏れなど、品質に関わる問題が発生した場合に使用します。ロット番号や影響範囲の特定が重要です。
労働災害・怪我
業務中の怪我や体調不良など、従業員の安全に関わるインシデントを報告します。労災申請の基礎資料にもなります。
顧客クレーム・トラブル
顧客との間で発生した重大なトラブルやクレームを記録し、対応経緯と再発防止策を報告します。
書き方のポイント
事実と推測を明確に分ける
「何が起きたか(事実)」と「なぜ起きたと思うか(推測)」は明確に分けて記載します。事実の部分は客観的なデータや証拠に基づいて書きましょう。
時系列で経緯を記録する
インシデントの発生から検知、対応、復旧までの経緯を時系列で記録します。「何時何分に何をしたか」を正確に記載することで、対応の妥当性を検証できます。
影響範囲を明確にする
インシデントによって影響を受けた範囲(人数、システム、期間、金額など)を具体的に記載します。影響の大きさによって、その後の対応レベルが変わります。
根本原因を分析する
表面的な原因だけでなく、「なぜそれが起きたのか」を掘り下げます。「なぜ」を5回繰り返す「5 Why分析」が有効です。
再発防止策は具体的に
「注意する」「気をつける」ではなく、仕組みやルールの変更など、具体的で実行可能な対策を記載します。担当者と期限も明記しましょう。
関係者への報告を忘れずに
インシデントの影響を受ける関係者(顧客、他部署、経営層など)への報告状況も記載します。誰に・いつ・何を報告したかを記録しておきます。
記入例
システム障害の報告
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 報告日 | 2025年1月15日 |
| 報告者 | インフラ部 鈴木健太 |
| 発生日時 | 2025年1月14日 15:23 |
| 復旧日時 | 2025年1月14日 17:45 |
| 影響範囲 | 社内メールシステム全停止。全従業員500名に影響。約2時間半のサービス停止。 |
| 経緯 | 15:23 監視アラート発報 → 15:30 原因調査開始 → 16:00 ディスク容量枯渇を確認 → 16:30 不要ログ削除実施 → 17:30 サービス再起動 → 17:45 正常稼働確認 |
| 原因 | ログローテーション設定の不備により、アクセスログが肥大化しディスク容量が100%に到達。 |
| 再発防止策 | ・ログローテーション設定の見直し(1/20までに実施)・ディスク使用率80%でアラート追加・月次のディスク容量レビュー実施 |
よくある質問
Q. インシデントとアクシデントの違いは?
インシデントは「事故につながりかねない出来事」全般を指し、実際に被害が発生したもの(アクシデント)も含みます。被害の有無に関わらず、異常な出来事はすべてインシデントとして報告します。
Q. 報告のタイミングは?
第一報はインシデント発生(または発覚)後、できるだけ早く(目安:1時間以内)上長に口頭で報告します。詳細な報告書は、対応が落ち着いた後(通常1〜3営業日以内)に提出します。
Q. 自分のミスが原因でも正直に書くべき?
はい。隠蔽は発覚した場合により大きな問題になります。正直に報告し、再発防止策を提案することが、組織の信頼を守ることにつながります。
Q. 軽微なインシデントも報告が必要?
会社のルールによりますが、基本的には報告すべきです。軽微に見えるインシデントが、実は重大なリスクの兆候である場合があります。判断に迷ったら上長に相談しましょう。